地図を二枚重ねるとき、最初に合わせるのは縮尺と凡例である。等高線の間隔が違えば、同じ山が別の高さに見えてしまう。半導体業界のランキングを作る作業も、これに近いところがある。並び順を決める前に、その数字が何を測った値なのかを確かめておかないと、出てくる順位は産業の姿ではなく、凡例の違いを写した像になる。

「売上の大きい順」に並べたとき、筆者が見落としていたもの

売上高の大きい順に企業を並べると、産業の構図はおおよそ見えるように思える。だがそこで見ているのは企業の規模であって、稼ぎ方の違いではない。以前、ある企業の利益率だけを見て、営業キャッシュフローの悪化を見落としたことがある。あのときと同じ種類の取り違えが、順位表にも入り込む。

半導体の場合、取り違えは三つの形で現れる。第一に、比べている範囲が会社全体の場合と一事業部門の場合で混在する。第二に、会計年度の終了日が会社ごとに違う。第三に、通貨が米ドル・台湾ドル・韓国ウォン・ユーロに分かれる。この三つを放置した一覧は、順位の形をしてはいるが、同一基準の比較ではない。

産業全体の大きさを、先に分母として置く

個別企業を並べる前に、分母を一つ置いておきたい。WSTSが2026年3月に公表した2025年通年の世界半導体売上は7956億米ドル、前年比26.2%増である。確定実績として使える値である。

工程は三段階、しかし開示の単位は会社と部門

工程で見れば、半導体は設計、ウェハ製造、組立・テスト・パッケージング(ATP)の三段階に分けて捉えられる。設計だけを担って製造を外部に委託するファブレス、受託製造を引き受けるファウンドリー、後工程を受け持つOSAT、設計から製造まで抱えるIDM、という役割の分かれ方になるが、一社が複数の役割にまたがる例もある。OECDの2025年の整理では、設計は研究集約的、製造は資本集約的、ATPは相対的に労働集約的とされている。

注意が要るのは、企業が外に出す数字の単位が工程ではなく、連結会社か事業部門だという点である。したがって本稿では、各社が公表する連結・部門の数値をそのまま比べ、どの事業の数字かを併記する。部門別の数字を自分で確認するときは、EDINETでセグメント情報をたどる手順が使える。部門の事業内容と工程の対応は、各社の事業説明を照らし合わせて読むことになり、部門の数字をそのまま工程別の内訳とみなすことはできない。

売上と営業利益を、範囲を明記して並べる

半導体関連事業の売上規模で概算すると、次のようになる。範囲が揃っていない数字を一つの表に置くため、順位は目安として読む。韓国ウォンと台湾ドルは2025年の平均為替で換算した概算である。

半導体関連事業の売上高と営業利益(概算、億米ドル・範囲別)
比較範囲 売上高 営業利益 対象年度・公表
NVIDIA(連結、FY2026) 2,159 1,304 2026年1月25日終了/2026年2月25日発表
TSMC(連結、FY2025) 約1,222 約621 2025年12月31日終了/2026年2月10日資料
Samsung電子 DS部門(部門、FY2025) 約916 約175 2025年12月31日終了/2026年1月29日発表
SK hynix(連結、FY2025) 約683 約332 FY2025/2026年1月28日発表
Intel(連結、FY2025) 529 -22(営業損失) 2025年12月27日終了(52週)
Broadcom 半導体ソリューション部門(部門、FY2025) 369 212 2025年11月2日終了/2025年12月18日付年次報告

出典:NVIDIA、TSMC、Samsung電子、SK hynix、Intel Form 10-K、Broadcomの各決算資料。為替は米連邦準備制度 G.5Aの2025年平均(1米ドル=1,421.3963ウォン、31.1663台湾ドル)。

連結全体と部門別が同じ表に並んでいる点は、読むときに引いておきたい線である。Intelは連結で22億米ドルの営業損失だが、部門別ではIntel Productsが127億米ドルの営業利益、Intel Foundryが103億米ドルの営業損失で、部門数値には部門間取引が含まれる。

同じ一覧の中でも、利益の出方は一様でない

売上の大きさだけでは、どこで利益が生まれたかは分からない。BroadcomのFY2025連結売上高638.87億米ドルには、ソフトウェア部門の270.29億米ドルが含まれている。半導体事業の収益を見たいのであれば、連結の一行ではなく半導体ソリューション部門の売上369億米ドル・営業利益212億米ドルの側を取る、という選び方になる。

メーカーの内側でも源泉は分かれる。SK hynixはFY2025の営業利益率49%を報告し、HBMなど高付加価値のメモリー製品を業績の要因として挙げている。TSMCは概算で営業利益率50.8%、NVIDIAは60.4%にあたる。Intelでは、同じ会社の中で製品部門が営業利益を計上し、受託製造部門が営業損失を計上した。

水準そのものをどう見るかは、業種別の営業利益率の目安を隣に置くと見当がつきやすい。

製造装置の会社は、別の列に置く

供給網の中で収益を上げているのはチップメーカーだけではない。ASMLはFY2025に売上327億ユーロ・営業利益113億ユーロ、Applied Materialsは2025年10月26日終了年度で売上283.68億米ドル・営業利益82.89億米ドル、うちSemiconductor Systems部門が売上207.98億米ドル・営業利益73.79億米ドルである。これらはチップを売った金額ではなく、装置やサービスの対価である。本稿では同じ列に混ぜず、別に扱う。

次に開く書類を、一つ決める

一覧の順位を眺めるより先に、関心のある一社の年次報告書か有価証券報告書を開き、セグメント情報の注記から部門名・売上高・営業利益を書き写す。そのうえで会計年度の終了日と通貨単位を同じ行に添え、換算に使った為替の出所を欄外に残す。この三つがそろった行だけを横に並べていくと、順位の形をした一覧が、比べられる表に少し近づく。