工場の搬入口に段ボールが積まれ、トラックが次の積み替え先へ出ていく。港の物流ヤードでも、倉庫の奥では箱が行き先ごとに仕分けられている。どちらの光景も、会社の内側で何が行われ、その流れのどこで売上が生まれるのかを外から示している。筆者は出張先で工場を見て回るのが好きで、現場を歩くたびに、決算書の一行がどの段階の仕事を映しているのかを想像しながら読むようになった。

営業利益率の目安を業界ごとに比べる作業は、この流れの中で各段階が売上のどれだけを手元に残しているかを、数字の側から確かめる作業である。本稿では、まず指標の定義を押さえる。次に製造業者、卸売業、小売業の役割を取引の段階ごとに分けて見る。そのうえで、公表された2025年度の業種別の数値を並べ、その差が売上原価率と販管費率のどちらに現れうるのかを読む。

営業利益率は、売上のどこまで残るかを測る

財務省の指標解説によれば、営業利益率は営業利益を売上高で割って100を掛けた数値である。営業利益は本来の営業活動から得た利益を指す。つまりこの指標は、受け取った売上のうち、本業の費用を払ったあとに何%が残るかを示している。

計算の出発点は損益計算書である。中小企業庁の解説は、売上高から売上原価を引いて売上総利益を出し、そこから販売費及び一般管理費を引くと営業利益になると整理している。販管費の例には従業員給与、旅費交通費、消耗品費が挙げられている。

第一に、売上原価がどれだけ売上を食うのか。第二に、販売と組織の運営にどれだけ使うのか。この二つが、営業利益率の骨格を決める。業種別の数値に差が出たとき、その差は二つの段のどちらか、あるいは両方に現れる。

目安という言葉の扱いにも注意が要る。財務省の法人企業統計は標本調査であり、ここで示される業種別の数値は、その区分の水準を見るための集計値である。個々の会社の合格・不合格を決める線ではない。地図で言えば、等高線の一本のようなものだ。ある区分が全体の中でどの高さにあるかは分かるが、そこに立つ個別の地点の標高までは教えてくれない。率を一つ読むことは、分子と分母がそれぞれ何を含んでいるかを読むことでもある。

三つの段階は、それぞれ自分の損益計算書に載せる

箱の流れに沿って役割を書き出してみる。製造業者は原材料を加工して製品を供給する。卸売業はその製品を仕入れ、小売業者へつなぐ。小売業は消費者に販売する。日本政策金融公庫総合研究所が2014年10月に発行した調査レポートは、卸売業を製造業者と小売業者の中間に位置する流通業と位置づけ、調達、販売、物流・保管、金融・危険負担、情報提供・サポートの機能を整理している。

三者はそれぞれ別の取引段階で売上高を計上し、そこで発生する売上原価と販管費を自社の損益計算書に載せる。ある段階の売上は、次の段階の仕入に当たる。そのため、同じ一つの製品が段階ごとに別々の会社の数字として現れることになる。流れのどこに立つかによって、その会社の売上の性格も費用の中身も変わってくる。

卸売業について特に目を引くのは、在庫を抱えることと、価格が動く間のリスクを引き受けることである。同じレポートは、卸売業を薄利とする企業事例に触れ、商品回転率の重要性にも言及している。取扱額が大きいことは売上という分母が大きいことを意味するだけで、高い営業利益率を意味するわけではない。在庫と価格変動の負担が、売上の大きさに見合う残り方になるとは限らないからである。

箱の流れを一段ずつ書き出すと、読者は自分の知りたい会社がどの段に立っているのかを先に決められる。立つ位置が決まれば、どの費用の項目から確かめるかも見えてくる。ただし、その順番は業種ごとに決まった答えがあるわけではない。どの業種でも、売上原価率と販管費率を同じ年度、同じ定義で並べて確かめるところから始める。卸売業に限って言えば、在庫の保管や物流、価格変動に伴う負担がどこで発生しているかを、事業の説明の中から拾うことになる。

差は、売上原価率と販管費率のどちらに出るかを確かめる

営業利益率を業種間で比べるときは、率の差を二つの段の差に分けて見る。売上高を100とすると、売上総利益率は100から売上原価率を引いた数値である。営業利益率は、その売上総利益率から販管費率を引いた数値になる。したがって、二つの業種の営業利益率に差があれば、その差は売上原価率の差、販管費率の差、あるいはその両方に分解できる。

この分解を数字で行うには、公的統計に同じ対象、年度、集計方法による業種ごとの売上原価と販管費の集計値があれば、それぞれを売上高で割って比較する。対応する集計値が得られない場合は、会計上の分解式までを示し、実際の業界差がどちらの段から生じたかは断定しない。個社の決算書を使う場合も、確認できるのは比較対象として選んだ個社間の構造であり、業界差そのものではない。

率だけを眺めて終えず、損益計算書のどの段で差が生じたのかを一つずつ確かめる。この手順は、業種別の数値を自社の数字と突き合わせる最初の一歩になる。率が同じでも、原価で削られた結果なのか販管費で削られた結果なのかによって、次に見るべき項目は変わる。

業種別の目安を並べてみる

財務省の令和7年度年次別法人企業統計調査について、財務省の公表予定ページは公表日を2026年9月1日としている。2025年度の実績では、売上高営業利益率は全産業5.4%、製造業5.5%、非製造業5.4%である。この表の全産業と非製造業は、金融業・保険業を除く区分である。

2025年度 非製造業8区分の売上高営業利益率 2025年度 非製造業8区分の売上高営業利益率 単位:% 0 5 10 15 不動産業 11.5 サービス業 9.5 情報通信業 8.4 物品賃貸業 8 建設業 5.7 電気業 5.7 運輸業・郵便業 5 卸売業・小売業 2.6

2025年度 非製造業8区分の売上高営業利益率(単位:%)
項目 売上高営業利益率
不動産業 11.5
サービス業 9.5
情報通信業 8.4
物品賃貸業 8
建設業 5.7
電気業 5.7
運輸業・郵便業 5
卸売業・小売業 2.6
出典:ISSOH「営業利益率の目安は?業種別・規模別の平均を最新統計で比べ、自社の…」/財務省「公表予定(法人企業統計調査)」

非製造業の8区分を並べると、幅は広い。不動産業11.5%、サービス業9.5%、情報通信業8.4%、物品賃貸業8.0%、建設業5.7%、電気業5.7%、運輸業・郵便業5.0%、卸売業・小売業2.6%である。流通の区分が最も低い位置に来ており、上端と下端の差は8.9になる。

製造業の11区分は次の表のとおりである。

2025年度 製造業の売上高営業利益率(単位:%)
業種 営業利益率
情報通信機械 10.2
化学 9.0
業務用機械 8.2
はん用機械 8.1
電気機械 7.7
生産用機械 7.2
金属製品 3.8
食料品 3.4
輸送用機械 3.4
鉄鋼 2.6
石油・石炭 2.2

出典:財務省「令和7年度 年次別法人企業統計調査」第4表。公表日は財務省の公表情報、数値は同表を引用した解説記事で照合した。

製造業の上端は情報通信機械の10.2%、下端は石油・石炭の2.2%で、幅は8.0になる。全産業の5.4%という一つの数字の内側には、これほど大きな幅が収まっている。数字が一つにまとまって見えても、中身は区分ごとに細かく分かれている。

掲載された区分の範囲で、非製造業の上端である不動産業11.5%と、製造業の下端である石油・石炭2.2%を比べると、差は9.3、倍率にすると約5.2になる。これは業種別の水準の幅を示すものであり、全社に共通する合格ラインではない。差の中身は、前節の分解で売上原価率と販管費率を個別に確かめる対象である。

二つの年度を重ねる

一時点の数値だけでは、その業種の体質なのか、その年の事情なのかは分からない。そこで年度を重ねる。全産業の売上高営業利益率は2024年度の5.0%から2025年度の5.4%へ、0.4上昇した。製造業は5.4%から5.5%へ0.1、非製造業は4.9%から5.4%へ0.5上昇している。2024年度の値は財務省の指標解説、2025年度の値は同表を引用した解説記事による。

この一年で上昇幅がより大きかったのは非製造業の側である。ただ、二点を結んだだけの線は傾きを示すにすぎず、この先の推移までは語らない。筆者は以前、ある企業の利益率の水準だけを見て判断し、営業キャッシュフローの悪化を見落としたことがある。率は損益の構造を映すが、現金の出入りまでは映さない。

率と現金を並べて読む手順は、決算書を損益計算書と営業キャッシュフローの両面から一年の流れでたどる見方に寄せてある。同じ率でも、現金の動きと並べると読み方が変わることがある。

比べる前に、そろえておくもの

業種別の数値を物差しに使うなら、先にそろえる項目を決めておく。

個別の会社について同じ指標を計算する手順は、営業利益率の計算と業種別の目安の見方で扱っている。業種別の数値は、自分で出した一社の数値を置く座標軸として使うと役に立つ。座標軸がそろっていれば、一社の数字がどの方向に離れているのかを読める。

最後に、三行で振り返る

営業利益率は営業利益を売上高で割った数値で、業種間の差は売上原価率と販管費率のどちらか、あるいは両方から生じうる。

2025年度の公表値では全産業が5.4%、非製造業の上端は不動産業の11.5%、製造業の下端は石油・石炭の2.2%、非製造業では卸売業・小売業が合算で2.6%である。

業種別の数値を目安として読むなら、区分の粒度と対象範囲、会社の分類と規模をそろえ、そのうえで自社の数値を隣に並べる。